障害者施設の事例
施設名: その他
ボランティア体験先の利用者に好意を持たれた事例
対応者
対応者 介護福祉士
対応者 女性
お相手
寝たきり度 わからない
認知症の状況 わからない
性別 男性
事例・対処法の要点まとめ
ボランティア体験先の利用者に好意を持たれた
丁重にお断り
職員、利用者間での出来事であれば周りの職員に相談
トラブルが起きた背景
私が20代だったときの話です。
前職の理容師を退職し、どの仕事に就くか模索している期間中でした。
福祉、介護業界への興味があり、年度末に市のボランティアで募集していた障がい者自立支援センターに応募し、1日ボランティアを体験しました。
障害のある人もない人も自分らしく生活できる環境の支援をしている施設です。
後天的な身体障害や先天的な肢体不自由者、知的障がい者やダウン症の方も通所サービスを利用していました。
年齢も、中学生から成人している人、車椅子を利用している人など様々でした。
利用者さん達と一緒に市役所に行きパンを販売したり、お花や野菜を販売したりしながらお話ししました。
自立支援センターの職員の方と利用者さんと一緒にファミレスでご飯を食べて、その日のボランティアは終了。
ボランティアの最後に利用者Kさんから声を掛けられ「また来てください」と言われました。
その日の体験はとても楽しく、人の役に立ちやりがいもある業界だと思ったため、数日後もう1件、今度は重度障がい者施設のお花見体験のボランティアに参加し、地元の桜の名所で重度知的障害の盲目の女性の食事介助をさせてもらいました。
その会場で何と、2週間前にボランティアをした自立支援センターの職員と利用者の方々と偶然再会しました。
「重度障がい者施設のその日のボランティアが終わったら少しお話ししましょう」と職員さんから言っていただきました。
私も介護業界のことを聞きたくて、職員さんとお話しするため、その日のボランティア終了後、自立支援センターの人達がお花見をしている場所へ行きました。
介護業界に興味を更に持って、求人を探してみたいと相談すると応援してくれました。
皆さん本当に優しく、ここで働いている人達は良い人ばかりなんだなと思っていると、利用者Kさんから声を掛けられ「今日は僕が送ります。お願いだから断らないで」と言われ手を握られました。
Kさんは脳梗塞で後天的身体障がい者、右半身不全麻痺、車椅子使用、知能は健常者と変わらずクリアですが、脳梗塞後遺症で構音障害もある利用者さんでした。
身体障がい者でも左半身で運転できるように改造された自家用車で会場に来ており、本人から強く自宅まで送ることを希望され、内心「困ったな」と思っていました。
知り合ったばかりでそんな対象に見れないし、好意を持っていてくれることを無碍に出来ないし、変にここで断ってみんながいる前で恥を掻かせちゃうのもいけないし、と職員さんに助けの目線を向けました。
しかし今回は、他のボランティアに参加した帰りでプライベートという判断になるため、職員さんからもKさんを強く諌めることは出来なかったらしいです。
(障害はあるけど知的障害は無いため、職員さんとしては成人男性の人間として他人への好意を応援したかったようです。)
私としてもはっきりと好意を伝えられたわけじゃ無いし、お礼の気持ちで送りたいと言ってくれてるのかもしれないしなと思い、もう一人一緒にボランティアに参加をしていた女性と一緒ならと駅まで送ってもらうことになりました。
しかし、その車の中で真摯に告白をされてしまいました。(同席した女性は気まずそうでした)
逆の立場だったら、気持ちを伝えることはとても勇気がいるとも思ったので、丁寧にお断りをしました。
ですが、あまりにKさんが肩を落としていたため、何だか弄んだみたいな罪悪感を感じてしまいました。
最寄駅で降ろしてもらい、その日は帰路につきましたが、申し訳ない気持ちが残りました。
そのときの出来事には少し困った思いをしましたが、楽しかった介護業界への興味は残ったので、その後は高齢者特別養護老人ホームで勤務するようになりました。
勤続を3年続けて、介護福祉士資格を取得しました。
対応者の中での対応
その時はまだ私も若く、更に介護業界の事をよく知りませんでした。
ボランティアとしてプライベートで参加していたため、果たしてその時の私の対応が良かったのか悪かったのかはよくわかりません。
そのときは「好意を持ってくれたことは嬉しいですが、今は好きな人が別にいるんです」と答え納得してもらいました。
(本当はいませんでしたが、Kさんが障害を理由に断られたと思い込んで傷付いてしまうことを避けたかったからです)
ボランティアではなく、もしもKさんにサービスを提供する職員として接していたのなら、ある程度の距離感を大切にすべきだと、そのときに学びました。
今後同じ事例が起きた時の対処法
身体障害と一概に言っても、障害の程度も症状もバラバラ、更にその人の年齢やパーソナルな部分も様々なため、相手の背景を理解して接することが大切です。
特に40代男性、脳梗塞後遺障害が残ってしまったことによって、障害が残る前よりただでさえ制約がある生活を送っています。
この件があった当時、Kさんはもうその障害を受容できる段階でしたが、様々な基本的ニーズや発達段階を達成できなくなってしまった喪失感が、もしかしたら心の中にあったのかもしれません。
そういったことに、十分理解を示した上で対応することが大事です。
仮に職員、利用者間で起こった出来事だったとしたら、一人で抱え込まず周りの職員に相談し、こちらとしての対応も真摯に返答することが必要です。
相手に理解を示し、歩み寄り尊重する姿勢や誠意は伝わるからとアドバイスをしたいと思います。