障害者施設の事例

利用者が不安感から他者の物を盗る事例

事例データ

投稿者

対応者

対応者 社会福祉士

性別 男性

お相手

対応者

性別 男性

Sさんの特性として、ホームの食材や他人の物を盗ってしまうことがよくあります。

トラブルが起きた日については、グループホームの他利用者Aさんの部屋に入り、コレクションしていたCDを盗んでしまいました。

Aさんより物がなくなっているとの訴えが私の方にあり、室内カメラを確認したところ、SさんがAさんの部屋に入りCDを持ち出す姿がカメラに映っていました。

そこで私はSさんにAさんのCDを返すように話をしたところ、Sさんは盗んだことを否定し、グループホームの共用部屋で暴れ出してしまいました・・・

鋭利なものは基本的に利用者の手の届くところには置いていないのですが、Sさんはキッチンからフライパンを出し、自身の頭を激しくフライパンに何度も打ち付け始め、あまりの勢いにとてもびっくりしましたが、何とかSさんを取り押さえ、一旦興奮状態からは落ち着くことができました。

その後Sさんと話をしたところ、どうやらお金に対する不安感が強くなると「盗る」という行動に繋がってしまうのではないかと考察し、毎日のお小遣い制を取り入れたところ「盗る」という行動はかなり減りました。

良かった点

今回の件では、まずAさんからの訴えを真摯に受け止め、冷静に事実確認を行うことができた点は良かったと思います。

室内カメラを確認し、誰が何をしたのかを客観的に把握できたことで、誤解を避けた対応が取れました。

また、Sさんが共用部で興奮して暴れた際にも、パニックにならず安全を最優先にしながら、何とか取り押さえ、落ち着かせることができたのは、自分なりに冷静な判断ができた場面だったと思います。

その後、Sさんとの対話を通じて、行動の背景に「お金への不安感」があると気づき、お小遣い制という具体的な支援策を試みたことも、結果として問題行動の減少に繋がり、今後の支援方針のヒントを得ることができたと感じています。

改善点

反省すべき点としては、Sさんの特性を以前から把握していたにもかかわらず、十分な予防策が講じられていなかったことです。

特に、他の利用者の私物が置かれている部屋への侵入防止や、Sさんが共用部へ自由に出入りできる状態だった点は、リスク管理として甘かったと痛感しています。

また、Sさんに直接「返すように」と促した際の言い方や対応のタイミングも、本人の不安を一気に高めてしまう結果になった可能性があり、もっと慎重な関わりが必要だったと反省しています。

今後は、問題が起きてからの対応だけでなく、起きる前の環境整備や個別支援計画の見直しを通じて、トラブルを未然に防ぐ取り組みを強化していきたいと感じました。

先輩福祉士からのコメント

なぜこのようなことが起きるの?

Sさんが物を盗ってしまったのは、不安感や金銭面のストレスが背景にあるからですね。
不安が強まると自己防衛的な行動が出やすく、物の所有欲や安心感を得るために盗みの行動に繋がったのでしょう。
環境の管理や不安要因の把握が不十分だったために起きてしまいました。

分析とアドバイスは?

不安感からの行動には、物理的環境の工夫だけでなく心理的ケアも重要です。 Sさんが安心できる「所有感」を持てるよう、お金や物の管理方法を明確にしていくのは良いですね。 さらに、認知行動療法的なアプローチで不安の根本原因を探り、ストレスマネジメントを支援するとより効果的です。 職員間で共有できる行動観察記録も活用しましょう。