障害者施設の事例

統合失調症の方が職員の対応に不満を感じた事例

事例データ

投稿者

対応者

対応者 精神保健福祉士

性別 女性

お相手

対応者

性別 男性

私は以前、主に精神障害をお持ちの方が通う、就労継続支援B型事業所で相談支援専門員として働いていました。

Yさんはそこの通所者で、統合失調症の症状がある方でした。

事業所は元は作業所だったこともあり、内職作業やバザーで販売する作品制作が日中活動のメインで、事業所内の清掃は利用者と職員皆で行うルールでしたが、Yさんはそういった活動にはあまり積極的ではありませんでした。

自身が作った詩を発表する機会や、レクリエーションの方が好きなタイプでした。

そのため、定時の作業時間(10時〜15時)にきちんと通える日は少なめで、遅刻や早退が多い利用者でした。

ある日、作業開始の10時には不在だったYさんが、11時頃になって作業所内の椅子に座ってぼんやりとしていました。

私は、またいつものように体調が改善してから通所してきたんだな、それでも顔色も良くないのでもう少し様子を見ようと思い、その場では特に話し掛けることもなく、そのまま自分の仕事を続けました。

Yさんはすぐに声を掛けられなかったことを不満に感じたようで、私に対するクレーム(Kは通所者を無視している等)を、私や他の職員に対して繰り返し訴えるようになりました。

私から他の職員に当時の状況を説明して、他の職員からも私からもYさんを無視していないし、大事な通所者であることを繰り返し伝えました。

しかしYさんは最終的には市の障がい者虐待通報窓口に連絡をしました。

窓口の担当者からの問い合わせに対しては、事業所の所長が虐待などはないことを説明して理解が得られました。

良かった点

Yさんのクレームに対して私一人ではなく、職員みんなで共通の理解をして対応した点。

職員一人で対応すると、通所者の訴えの範囲が広がることがあります。

Yさんも統合失調症の妄想の症状があるため、今回の件だけではなく「この作業所は通所者の工賃をピンハネしている」ということも訴え始めました。市の通報窓口にもその件も訴えていました。

そうなると特定の職員だけに関わる話ではなくなるため、事業所全体で共通認識を持って対応できたことで、Yさんの事業所全体や職員への信頼が少しずつ戻って行きました。

また、普段から真面目に事業所を運営していたことは、市の担当者の理解を得られた要因の一つだと思います。

改善点

障害をお持ちの方の中には、定時にきちんと通所することが難しい方も多いと思います。

それには体調などそれぞれの理由があるため、定時の通所を強制する必要はないと思います。

けれど定時に通えない時というのは、体や心などどこかに不調があることが多いです。(中には他の所へ遊びに行くためという方もいるため、その通所者の方はどんな人なのかを普段の関わりの中からよく理解することが大切になります。)

だからこそ、遅れて来た時には毎回声を掛ける必要があると思います。

詳しく聞くには体調が悪そうだなと思ったら「おはよう」などの短い挨拶だけでもいいので、まずは声を掛けてみて下さい。

その時はそれきりでも、一度言葉を交わしているだけで次に話しかけやすくなると思います。

そしてその状況を他の職員にも伝えて共有しておけば、皆で対応することができます。

精神障害をお持ちの方とのコミュニケーションはとても難しいですが、短い会話を日々積み重ねることで、信頼関係が育っていくと思います。

先輩福祉士からのコメント

なぜこのようなことが起きるの?

Yさんが不満を感じたのは、「利用者として重要に扱われていない」と感じたからですね。
症状や好みが“作業一辺倒”の枠組みでしか捉えられておらず、「発表」「レクレーション」など彼が求める活動の機会が少なかったこと、それから遅刻・早退の背景(体調・興味・モチベーション等)への配慮や声かけが不十分であったことが重なったのだと思います。
また、職員側が忙しさなどを理由に、Yさんの訴えをすぐ受け止めきれなかったことも原因のひとつですね。

分析とアドバイスは?

まず、支援者としてYさんの“通える日数”“好む活動”“現状の体調”を個別支援計画で丁寧に把握することが大切です。 そして、「遅刻・早退」にはネガティブな叱責ではなく、“どうしたの?”という問いかけ型で関心を示して様子を見ていくことがいけません。 それから、「声をかける基準」「誰がいつ対応するか」の役割分担を職員間で明確にすると良いでしょう。 また、定期的に利用者が抱えている不満・期待をアンケートや面談で聴き、職員全体で情報共有する仕組みを作っておくことが支えになります。