障害者施設の事例

重度知的障害の方が他害行為をする事例

事例データ

投稿者

対応者

対応者 社会福祉士

性別 男性

お相手

対応者

性別 男性

6年前に障害者支援施設に人事異動で赴任しました。その施設では、重度から最重度のみが利用しています。

暴力的な利用者も多数入所しています。

その中でも、当該利用者には十分気を付けるよう初日から説明がありました。

訳を聞くと、利用者が衝動的に他利用者及び職員構わず他害行為(殴る蹴る)を行うからだそうです。

また、本施設3階建てでエレベーターはありません。

そのため階段を自身が降りる際及び、階段で利用者を誘導している際は背後に注意するようオリエンテーションで指示があります。

最初は嘘のような注意喚起でしたが、1か月後1階の事務所で作業していると階段からものすごい音がします。

すぐに確認すると他利用者が階段10段以上から転げ落ちたようで階段の最上段には当該利用者が薄笑いをし立っていました。

被害を受けた利用者は救急搬送され一命を取り留めました。

当該利用者に事情を聴くと階段から押したことを認めました。

その方は、これが原因で退所しました。

その後、他法人のグループホームで過ごしていると聞きましたが、数年前にも同じく他害行為をしその施設も退所したとのことです。

その後の行方は不明です。

良かった点

今回の事例で良かった点は、「処遇困難な利用者を抱える施設ながらも、日々の支援に慎重な姿勢を保っていたこと」です。

ルーティンを崩さないよう配慮したり、対応方針を変えすぎずに安定性を重視していたことは、他利用者にも影響が及びやすい環境下ではとても大切な基盤になります。

また、職員側で強度行動障害の存在を認識し、注意を促すオリエンテーションを行っていた点も評価できます。

これらは、予防的・抑制的対応の土台をつくるうえで重要な取組みだったと思います。

改善点

今回のような他害行為は、本人の特性を踏まえた環境調整やリスク管理が十分とは言えなかったかもしれませんね。

特に階段のような事故につながりやすい場所では、物理的な安全対策を強化することが必要です。

例えば階段の利用時間を利用者ごとにずらしたり、階段付近に職員を常駐させるなど、“予測”に基づいた支援体制を整えておくと、未然に防げた可能性があります。

また、強度行動障害の方には、一貫したルーティンや明確なスケジュール提示、視覚的な支援ツールの活用が非常に効果的です。

行動の背景には不安や刺激過多、言語表出の困難さがある場合も多く、事前に“なぜその行動が起こるのか”をチーム全体で理解し、個別支援計画に反映していくプロセスが大切だと感じました。

先輩福祉士からのコメント

なぜこのようなことが起きるの?

このような重大な他害行為が起きた背景には、重度知的障害の方が言語での自己表現が難しいこと、突発的な衝動性が強い特性を持っていること、そして環境の安全配慮が十分でなかったことが重なったからだと思います。
特に階段という危険要素を含んだ構造下で、支援者の目が行き届かない隙をついて行動が実行されてしまったのでしょう。

分析とアドバイスは?

こういうケースでは、事故を未然に防ぐ構造的なセーフティ設計と、事前の行動予測と環境調整が不可欠ですね。 具体的には、階段・高所付近への物理的な遮断設置、誘導時は複数支援者でフォロー、危険場面の擬似演習訓練、高頻度行動のパターン分析をして回避手順をあらかじめ決めておくことです。 それから、行動機能アセスメント(なぜその人が他害を選ぶか原因を探ること)を行い、それに基づいた代替行動プランも支援計画に入れておくと一層効果的です。