障害者施設の事例

重度知的障害の方が支援員に執着しすぎる事例

事例データ

投稿者

対応者

対応者 ボランティアその他

性別 女性

お相手

対応者

性別 女性

利用者Nさんが、お気に入りの支援員に執着しやすいというのは、私がパート勤務を始めた時にすぐわかりました。

一日当たりの利用者は10名ほど、支援人は3人体制となっており、トイレ介助や移動補助も必要な方が多かったのでかなり忙しかったです。

そんな状況でNさん一人だけをマンツーマンで支援することは不可能なのですが、Nさんはどうしても自分中心に動いてくれる支援員を手元に置いておきたくて仕方ないという感じでした。

私が勤務を始めて1週間したころ、送迎の当番でNさんのお家を回るコースに当たりました。

特に何か特別手をかけたということはないのですが、それをきっかけに私への執着が施設内でも見られるようになりました。

例えば、他の利用者の方のトイレ介助をしている時に大声で私を呼びます。

「今介助中だからちょっと待ってね」と言っても「来てくれないと私は動かない!作業しない!」とすね始めます。

他の利用者の方と話しているのも気に入らないようで、私と話した利用者さんに意地悪をしてみたりと問題をたびたび起こすようになりました。

良かった点

そこで、先輩の支援者さんと話し合い、Nさんの送迎コースから当面の間私を外すことにしました。

施設内では、私はNさんからできるだけ離れた場所で他の利用者さんと関わっているようにすると決めました。

支援員みんなが状況を理解してくれ、チームになって私とNさんの距離感を保てるようにしてくれたので、大声で私を呼んでいる時は「Kさん今別の方と作業中だからねー」と言って他の支援員が進んで行動してくださいました。

しばらくは何も変化はありませんでしたが2週間くらいしたころから諦めたのか、大声で呼んだりすねてしまったりといったことがだいぶ見られなくなりました。

良かった点は、送迎コースから外れるにしても施設内にしても物理的に距離を取るということです。

他の支援者とミーティングをし、情報を共有してみんなで協力することも有効でした。

私が呼ばれても「今は来れないよ」と他の支援員が言うことにより、仕方ないと諦めざるを得ない状況を作って理解してもらうことにより、次第におとなしくなっていったので今回の対応は良かったと思います。

かといってNさんを避けるようなことをせず、ごく普通の距離感を保つことを意識して接し、私はいつもと変わらないということを態度で示せていたと思います。

意地悪された利用者に対しては他の支援員が積極的に声掛けをしてくれて、大事にならずに済みました。

改善点

利用者の特性にもよりますが、今回のように距離を取ったり、他の支援員に助けてもらうことは大切です。

同じ利用者一人に対しても支援員一人一人見えていることが違うので、情報の共有をしておくといざというときチームワークを発揮しやすくなると思います。

今回私は特に執着されるようなことをした覚えはありませんが、もっと事務的に仕事であるということが分かるように、一線をしっかり引いた接し方をますます意識しようと思いました。

先輩福祉士からのコメント

なぜこのようなことが起きるの?

Nさんが特定の支援員に強く執着してしまったのは、「安心できる存在への過度な依存」が関係していると思います。
重度の知的障害を抱える方はコミュニケーション手段や自己主張の方法が限られがちで、“この人ならわかってくれる”“この人がそばにいてほしい”という思いが強く残る傾向があります。
支援体制に余裕がなく、ほかの利用者との関わりとのバランスが取れていなかったことが、執着を助長したのでしょう。

分析とアドバイスは?

対応としては、「支援員を交代で対応」「物理的距離を設ける」などの手法は有効ですね。 ただ、単に距離を置くだけでは不安感を強めてしまうことがありますから、代替の安心感を与える工夫を並行すべきです。 例えば、特定支援員以外のメンバーでもNさんと関わる時間を意図的に設け、他者との関係形成を促す「段階的な分散支援」を構えるといいですね。 また、支援員同士で“この人にはこう関わる”“こういう言葉がけが有効”という情報を日ごろから共有する仕組みも必須です。