障害者施設の事例
施設名: 就労継続支援B型
統合失調症患者が支援員に好意を持ち行き過ぎたアプローチをした事例
対応者
対応者 生活支援員
対応者 女性
お相手
寝たきり度 J1
認知症の状況 Ⅰ
性別 男性
事例・対処法の要点まとめ
統合失調症の患者が、異性の支援員に好意を持ち、行き過ぎたアプローチを行った。
指導したが改善されず、担当支援員が別の棟へ異動した。事業所で職員の異動があり、同性対応が難しくなったことから利用終了となった。
福祉施設としての関わりだけではなく、医療機関や家族との連携を取り、適した担当者を定めることが重要。
トラブルが起きた背景
Mさんは統合失調症と発達障害と診断され、異性への強い関心とこだわりがありました。
異性の担当支援員に好意を抱き、アプローチをするようになりました。
例えば、利用者が書く日誌に担当支援員を褒める文章を書いたり、作業訓練中に視線を送り続けたりといったものです。
Mさんはそうすることで異性は喜び、結婚することができると考えていたようです。
担当支援員は職業指導として「仕事をする場では相応しくない」と伝えましたが、Mさんにとっては自分のアプローチに対して反応があったという手応えになったのかもしれません。
行動は変わらず、Mさんにとってこの通所は「就労のための訓練」目的ではなくなっていました。
元々Mさんには病識がなく、医療や福祉に繋がったのも周囲の勧めに仕方なく応じているだけで、ご本人は就労支援を受ける必要を感じていませんでした。
そのため、就労の場としての振る舞いを助言することも、エスカレートする病的なアプローチへの対応もMさんの耳には入らない状況でした。
やがてMさんは担当支援員が帰るのを待ち伏せしたり、身体を触ろうと手を伸ばして近寄ったりと、逸脱した行動をとるようになってしまったのですが、実は自己判断で服薬を止めているようでした。
Mさんは自制ができなくなっていたのです。
事業所は担当を同性の職員に変更しようとしましたが、元の担当支援員Hの姿が見える限り状況は変わらず、Hが配置転換となり別の建物で勤務することになりました。
しかしMさんは行動を抑えることが難しく、ある日「Hと結婚するので食事に行く」と待ち伏せし閉所後の夜遅くまで立ち退きませんでした。
管理者はMさんのご家族を呼びましたが、Mさんと一緒に帰宅せず(別々の車で来ていたため)Mさんは帰るふりをして戻ってきたのです。
「このままだと通報しなくてはいけない」と伝えたところご家族は怒ってしまいました。
このことに加えて、同性の職員が異動となり、異性の職員では対応が難しいと管理者が判断したことで利用契約は終了となりました。
対応者の中での対応
当事業所を利用する前から同様の症状・トラブルのあった方でした。
感情転移を防ぐ対応を心がければ、異性の担当者でも支援できると思っていましたが、ご本人の病状を刺激することになってしまったためはじめから担当者を同性にすべきだったと思いました。
今後同じ事例が起きた時の対処法
雇用契約を結ばずに就労支援を受けられるB型事業所には、比較的症状の重い方や不安定な方も多く通所されます。
「働くこと」を支援するには一般常識や社会のルールを知り身につけられるような関わりも必要ですが、それらを受け入れられる段階にある人ばかりではないという理解が必要です。
この場合は福祉施設としての関わりだけではなく、医療機関や家族などとの連携が不可欠でした。
また事業所内でもその方の経過や症状、特性を把握して適した担当者を定めれると良いと思います。
支援途中であっても支援者側が危険を感じたり、自分が支援を続けることが困難であると感じた場合は無理をせずに検討し直すことが必要だとも感じます。