障害者施設の事例
施設名: 就労継続支援B型
統合失調症の利用者が被害妄想により暴力をふるった事例
対応者
対応者 作業(職業)指導員
対応者 男性
お相手
寝たきり度 J1
認知症の状況 Ⅰ
性別 男性
事例・対処法の要点まとめ
統合失調症の利用者が被害妄想により店員に暴力をふるってしまった。
一度派出所に保護されることとなり、その後入院された。お見舞いに行き、焦らず治療するよう助言した。
利用者や保護者とコミュニケーションを取って、 できるだけ心身の健康状態を確認しておくと良い。
トラブルが起きた背景
精神障がい者の共同作業所に利用者Kさんの母親から電話が入り、私が対応しました。
利用者Kさんが前日の昼に街の飲食店で店員に暴力をふるってしまい、急遽入院が決まったという電話連絡でした。
いつもは物静かで、優しい性格のKさんですが統合失調症の幻聴によって時々、施設内でも辛そうにされることはありました。
幻聴の内容は男性の声が自分のことを悪く言う感じだそうで、時間的には短ければ数秒、長い場合は数分間続くものでした。
事件を起こしてしまわれたその日は共同作業所は休みで、同居の家族も仕事で不在だったため、Kさんは一人で街の飲食店に出かけられたのです。
何度も行ったことのある店ですが注文した後しばらく待っていると幻聴が始まり、Kさんは店員が自分のことを悪く言ってるという被害妄想を起こしてしまわれました。
事情を知らない店員と口論になり、Kさんが相手の服の襟をつかんで転倒させてしまったのです。
しかしお互いにケガはなく、店員の服の襟が破れたというだけの被害でした。
他の客から警察に通報はありましたので、事情聴取がありました。
そこで店長がKさんの障がいの事情を知り、ケガもなかったことから被害届は出さずに済ましてくれたそうです。
ただ店員と口論となったこと、そしてパトカーのサイレンの音や野次馬の喧騒などが原因でKさんは興奮してしまい一度、警察の派出所に保護されました。
そしてKさんの母に警察から連絡が来たとの事でした。
幻聴などはその騒動の前から落ち着いていたそうなのですが、Kさんは就業したいという思いが強まっていて「共同作業所を止めて、大きな会社で働きたい」と家で何度も母親に訴えかけておられたそうです。
現実には会社で勤められる状況には無いのですが、誇大妄想が激しかったとの事でした。
入院が決まり、最短でも2カ月は共同作業所に通えなくなられました。
その騒動の直後に、私はKさんの入院されてる病院にお見舞いの形で行き、焦らずに治療するように助言しました。
私としてはKさんが母親に向けて繰り返し言ったとされる「共同作業所に通いたくない」の理由を知りたかったのです。
しかしKさんがそう言った理由は、ただ一流企業で働きたいから言っただけだったそうです。
そして退院されてから数週間後にKさんは、また共同作業所に改めて通われました。
職員は心配していたのですが、Kさんは幻聴も被害妄想、誇大妄想の症状もほとんど無く落ち着いて過ごされました。
対応者の中での対応
共同作業所の利用者が、統合失調症の影響で急に調子を崩されることは他にもあったのですが、Kさんについては、暴力的な騒動を起こされるという心配を職員はほとんどしていませんでした。
ですが母親から教えていただいたところでは、騒動の数週間前からKさんに誇大妄想などの異変はあったとの事ですので、それ以降、職員は状態が落ち着いておられる利用者の家庭での様子も気にかけるようになりました。
何かの連絡ごとの時に本人や保護者に、家庭での様子を尋ねるといった細かな気配りをするようになったのです。
Kさんの騒動の経験を活かして、その後の利用者への配慮を更に細かく出来るようになったのは良かったのだと思います。
今後同じ事例が起きた時の対処法
福祉施設の職場は、慌ただしく勤務している状況もあると思います。
利用者への声掛けも、落ち着いて出来ない環境もあると思いますので、なかなか保護者の方にご家庭での利用者の様子を伺ったりはできないですし、また職員がどこまで家庭での状況を知るべきかも微妙な問題かと思います。
ですので無理のない範囲で、利用者や保護者の方とコミュニケーションを取って、できるだけ心身の健康状態を確認しておくと良いと思います。
利用者自らが職員に話しかけて来てくれるような環境作りが必要なのだと思います。