介護施設の事例

施設名: 介護老人保健施設

介護老人保健施設介護福祉士なし

対応者

対応者

対応者 介護福祉士

対応者 男性

お相手

対応者

寝たきり度 A2

認知症の状況 Ⅲb

性別 男性

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トラブルが起きた背景

2年ほど前、わたしが勤めているユニットの夜勤帯での出来事です。
今回ご紹介するMさんは当時わたしのユニットに入居していた方なのですが、重度の認知症に加え、かなりの暴力的な性格を持ち合わせていた方でした。日中はわりと穏やかなのですが、夜になると「家に帰る」というモードになり、「今日はここに泊まることになっていますよ」と声かけするや、「何でお前に指図されなきゃならないんだ!?あ?お前誰に口聞いてるんだ!?」と建物中に響き渡る怒鳴り声で詰め寄ってくるような方でして、それが当時日常的に繰り広げられていました。こういう場合はユニット内を歩き回らせてクールダウンを図り、Mさんが興味ある書物を見せて落ち着かせるという対応をしました。
わたしの職場では夜勤者は職員一人体制でしたので、こういった状況になっても一人でしなければなりません。
その日の22時頃、わたしの夜勤中ユニットの食堂に座っていたMさんが急に立ち上がりました。理由を問うと、「米を研ぐ」とのこと。しかし、そう話すMさんはユニットの側に置いてあったデスクトップのパソコンを乱暴に持ち上げようとするのです。パソコンは米ではないことを伝えると「何なんだ、お前は!?あぁっ!?」とこちらへ殴り掛かってきました。咄嗟に避けましたが、机に貼ってある書類をビリビリに剥がしたりなど収まる気配無かったため、内線で看護師に応援を要請しました。医師からの予測指示で、この時頓服の安定剤服用を試みましたが、声かけしても通用しません。やむなく強引に服用させるのを試みましたが吐き出してしまうため、ジュースなどに混ぜて摂取してもらいました。ですが、結局0時過ぎまで落ち着きませんでした。
その後、安定剤で落ち着いたのを見計らって布団まで連れて行きました。「おやすみ」と入眠しましたが、30分もしないうちにセンサーマットが反応。ベッドから起きようとしていました。
「かかぁがさらわれたから助けに行く」と話しました。奥さんは数年前に亡くなっているのですが、そのことを伝えても駄目なので「奥さんは大丈夫ですよ」と伝えると「何でお前が大丈夫だって知ってるんだ!?お前かかぁばさらった奴らの一味なのか!?」と至近距離で罵声を浴びました。
わたしの制止を振り切り、「かかぁば助けに行く!」と部屋を出ていきます。ところがふらつき著名であり、転倒歴もあるためついていくと、「何なんだ、お前はさっきから!!」と深夜1時にそぐわない大声を上げられました。
更に、就寝中の他入居者の部屋へ入ろうとします。当然止めるのですが、「こいつ(眠っている他入居者のこと)は誰の許可を得て勝手に俺の部屋で寝てるんだ!?権利書持ってこい!今すぐ追い出してやる!!」と怒鳴り散らしながらそれでも強引に部屋へ入ろうとします。これには流石に力づくで止めに入るしかありませんでした。「お前さっきから誰に指図してるんだ!誰に口聞いてるのか分かってるのか!!!」と散々怒鳴られました。
こういった内容が結局世が明けるまで収まらず、わたしは仮眠時間、他入居者のおむつ交換等全ての業務時間を削って付きっきりで見守り対応しました。

対応者の中での対応

認知症のせいもあるのですが、当時のMさんはわたしのことを完全に敵とみなしてかかってきていました。相手はマジな怒鳴り声であり、しかも一人勤務体制でしたので、人によってはかなり恐怖を感じると思います。しかし、自分が向かって行かなければ他入居者に被害が及ぶので、当然ながら逃げるわけにはいきません。何を言われても、手を出されても勤務時間が終わるまでMさんに怪我をさせずに自分のモチベーションを維持し続けられたことは幸いな事であったと振り返ります。

今後同じ事例が起きた時の対処法

介護職員といえ、一人の人間です。ですので、感情に振り回されることも多々あります。今回ご紹介したMさんは傲慢でかなりの暴力的な性格を呈していましたが、ADLはかなり低いので、こちら側(介護者側)のモチベーションのぐらつき次第では、気がつくと恐らく『暴力的介護』に走っていることでしょう。不謹慎ではありますが、身をもってわたしはその危険性へ陥りそうになる自分を体感しました。わたしは他者から『優しい性格だ』と言われることが多いのですが、そういった人間でさえも暴力的介護とは常に隣り合わせであるということを忘れてはならないのです。
たまにニュースで流れる暴力的介護。それは決して特別なことではなく、誰しもが陥る可能性のあるものです。自分はそうならない、そうなるかもではなく、自分はそういうことができてしまう人間であることをまず当たり前に自覚しておかなければなりません。
介護とは、そういうものであると考えています。希望と挫折は、常に表裏一体なのです。
だからこそ、チームワークが大切だと強く思います。そういう自分へ陥らないためにも、常日頃からプライベートでもストレス解消を心がけたり、可能であれば職場の中に何でも話せる人を一人ないし二人は見つけてください。夜勤帯でMさんにされた仕打ちを打ち明けられる人が一人でもいる事はとても大切な事なのです。もしそういう相手がいなければ、積もってゆく凄まじいストレスと仕事の度に対峙し続けなければなりません。
知識で解決できる場合もあるでしょうが、わたしはどんな事が起こってもモチベーションを維持させることが何よりも大切であると考えています。そうでないと、この仕事は多分長く続けられません。
仕事で起こった楽しい事や不安な事。
普段ともにそれを話し合えているのは当たり前な日常ではなく、介護職として必要不可欠な業務を行っているんだという認識を持つべきです。
願わくば、そういう明るいユニット環境作りが何よりも大切であるとわたしは考えています。

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